唾液でがん検査?6種類のがんリスクがわかる仕組みを解説

コラム

がん検診といえば、胃がんや大腸がんのリスクを調べるならエックス線検査や内視鏡検査、乳がんの検査ならマンモグラフィやエコーのように、部位別の検査を行うことが一般的です。全身のがんの有無を調べるPET-CTやDWIBSという検査を耳にすることも多くなりました。しかし近年、唾液によるがん検査が注目を集めています。

唾液を採るだけなので、痛みを伴うことなく短時間で受けられる手軽さはありますが、実際のところどうなのでしょうか。今回は唾液で調べるがん検査について解説します。

記事監修
東京医科大学 医学総合研究所
杉本 昌弘 教授

■略歴
1998年3月 早稲田大学理工学部機械工学科 卒業
2000年3月 同上修士課程 修了
2005年9月 博士(学術)取得(慶應義塾大学)
2013年9月 博士(歯学)取得(神奈川歯科大学)

2000年4月~2010年3月 三菱スペース・ソフトウエア株式会社
2010年4月~2011年3月 慶應義塾大学 先端生命科学研究所 特任講師
2011年4月~2013年3月 京都大学大学院 医学研究科 特別講師
2013年4月~2107年3月 慶應義塾大学 先端生命科学研究所 特任准教授
2017年4月〜 東京医科大学 医学総合研究所 教授
2013年12月〜 株式会社サリバテック共同設立取締役

唾液とは?|成分の大半は血液由来

唾液には「消化を促す」「口内を清潔に保つ」「味覚を感じさせる」などさまざまな働きがあります。体調が悪いと唾液量が減ったり、ネバつきなどの不快を感じることもあると思います。

唾液の99%は水分ですが、単なる水ではなく口腔内細菌や様々な分子を含みます。特に分子に関しては、血液中を流れる成分の一部が唾液腺を通して唾液に分泌されます。

唾液腺には大唾液腺と小唾液腺があり、大唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺に分けられます。健康な成人の場合、1日あたり1リットル~1.5リットルの唾液が分泌されています。

唾液には「健康状態を知るための指標」が含まれている

がんのリスクを調べる検査のひとつに、腫瘍マーカー検査があります。これは血液中に含まれる、がんから分泌されるタンパク質の物質を調べる検査です。

しかし、がんから分泌されるものは腫瘍マーカーだけでなく、様々な他の分子も分泌されます。その中にはタンパク質よりも小さなポリアミン類と呼ばれる分子があります。唾液検査では、このポリアミンが血液から唾液に移行したものを検出することで、現在がんにかかっているかを調べます。

がんの代謝異常を利用した検査

がん細胞による代謝異常を利用した検査としては、PET-CT検査もよく知られています。以下にそれぞれの検査特性を簡単にまとめます。

検査名 検査の特性
腫瘍マーカー    *1 がん細胞から特定のタンパク質や酵素が産生される特性を利用した血液検査。がんの種類ごとに特定の物質があり、その値を調べる。
唾液のがん検査 がん細胞から血液を通して唾液中にしみ出した、ポリアミンなどの代謝物濃度を調べる。
PET-CT
*2
がん細胞がブドウ糖をたくさん取り込む(糖代謝が高い)特性を利用した検査。FDG(フルオロデオキシグルコース)という微量の放射性物質を受診者の体内に投与し、FDGの集まる部位を確認する。

*1参考:大阪府済生会中津病院総合健診センター/田中督司部長 監修/「腫瘍マーカーとは|PSAやCA125などがんリスクの発見に役立つ血液検査」
*2参考:AIC画像検査センター/澤野誠志理事長 監修/「PET検査の費用は?|検査の内容やメリットも解説します」

唾液でリスクがわかるがんの種類

唾液からリスク把握が可能ながんは、以下の6種類です(2021年9月現在)。

  • 胃がん
  • 膵がん
  • 大腸がん
  • 乳がん
  • 肺がん
  • 口腔がん

しかも一度の採取で6種すべてを調べることが可能です。

あくまでも「がんの可能性がある」というリスク検査ですが、一般的な人間ドックやがん健診ではなかなか調べることがない膵臓がんや口腔癌が、唾液で手軽に検査できるのは受診者にとって有益といえるでしょう。

まとめ|数分間の手軽な検査で定期的な健康管理を

がん検診は大切なことはわかっていても、時間がかかるイメージや痛みへの不安などから、つい後回しにしている人が多いかもしれません。もちろんどんな検査も100%の精度ということはありませんので、複数の検査を組み合わせることが大切です。手軽にリスクを調べられる検査も上手に活用し、日々の健康管理に役立ててください。

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